冬はバードウォッチングのシーズンだってご存知ですか? 木の葉が落ちているので見通しが良いことと、他の季節に比べて渡り鳥が多く見られることから、初心者でも手軽に楽しめるんですよ。
わざわざ遠くの野山にまで行かなくても、身近な公園でも驚くほど色々な野鳥が見られるんです! バードウォッチングの楽しみ方を水元かわせみの里のガイドを務める佐藤真人さんに教えてもらいました。
カワセミやタカも! 冬に見られる野鳥たち
公園で見られる野鳥は季節によって異なります。一年中同じ場所に生息している「留鳥(りゅうちょう)」のほか、季節限定で飛来する「渡り鳥」がいるからです。
渡り鳥には、夏の間に日本で繁殖するため南国から飛来する「夏鳥」、越冬のために日本より寒いシベリアなどから南下してくる「冬鳥」、春や秋頃、移動の途中に日本を通過する「旅鳥」などがいます。
東京都葛飾区にある「水元公園」は自然豊かな水郷景観があり、この時期たくさんの野鳥たちが羽根を休めに集まってきています。たとえば、こんな野鳥たちを間近に見ることができるんですよ!
■カワセミ
水元かわせみの里水辺のふれあいルームでは、自然環境を学べる掲示物や水辺の生き物の展示があり、ガラス越しに魚やエビを食べにやってくるカワセミを見ることもできる。1日10回程度やってきて、運が良ければ1mほどの距離にとまることも。鮮やかなブルーの体と長いくちばしが特徴的。■ヒドリガモ
越冬のために飛来してくる冬鳥で、日本中の湖や川で普通に見ることができる淡水ガモ。オスはメスに比べて頭が赤く、モヒカンのような白い模様がある。つがいで行動している場合が多い。■オオタカ
山地の森林で繁殖し、秋冬になると人里までおりてくる。ハトやネズミなどを捕らえて食べる猛禽類。山の中まで行かないと見られないイメージがあるタカも、意外にも都市の公園で見ることができる。■メジロ
スズメよりも小さく、黄緑色の体と目の周りの白いふち取りが特徴的。一年中見ることができる留鳥。花の蜜や果汁を好んで食べるので、家の庭先でもエサ台に砂糖水や果物を置いて呼び寄せることができる。
他にも「水元公園」では今の時期、冬鳥のジョウビタキやツグミ、シジュウカラ、アカゲラなど50〜60種類の野鳥が見られます。そもそも野鳥を意識して見たことがない筆者にとっては、こんな身近にたくさんの渡り鳥やタカまでもが生息していることに驚きを隠せません!
バードウォッチングを楽しむための4つのポイント
ポイント1:バードウォッチングのための服装と持ち物
・持ち物
双眼鏡(8倍くらいのもの)、図鑑、飲み物、暑さ寒さ対策(冬はカイロなど)、レインウェア、虫除けスプレー(主に夏場)
※バードウォッチングツアーに参加すると、双眼鏡や図鑑は現地で借りられる場合もあります。
・服装
長袖長ズボン(ダニや虫さされを避けるため)、帽子
ポイント2:最初は大きくて動きの少ない水鳥から
飛ぶ鳥を双眼鏡で捉えるのは難しいので、まずは大きくて動きの少ないカモなどの水鳥から始めましょう。子どもでも簡単に観察することができます。ポイント3:時間帯は午前中。野鳥が好む木の実や鳴き声を頼りに見つけよう
空を飛ぶ野鳥を見つけるには、ケヤキやアキニレ、トウネズミモチなど、野鳥が好んで食べる実がなる木を探すのがコツ。鳥の鳴き声を聴きながらその居場所を探ってみましょう。野鳥の声を聞くことができる図鑑やスマホのアプリも出てるので、鳴き声を覚えていくとより楽しめます。
野鳥は朝のうちに餌を探して動きまわるので、9時頃までがウォッチングにベストな時間帯ですが、午前中のうちでも充分見られます。
ポイント4:外見から鳥の生態を想像してみよう
野鳥は食べ物によって行動パターンも体の形も違います。野鳥を見つけたら、その外見から何を食べるのか想像してみると楽しいですね。
ハシビロガモのくちばしは長くて横幅が広く縁が歯ブラシのようになっています。これはくちばしを水面につけて水を吸い込み、その中のプランクトンや草の実だけ取り込んで、水を吐き出すという食事の仕方をするため。
カワセミのくちばしが長いのは、水にもぐる際に水の抵抗を減らすため。この形状は新幹線「のぞみ500系」にも応用され、トンネルに入る際の抵抗が軽減されたそうです。
シメはくちばしが太く短いため、簡単に植物の種子を割ることができます。シメのはさむ力は30kg以上もあるそうです。
バードウォッチングガイドウォークを初体験!
それではさっそく、水元かわせみの里のガイド、佐藤さんに案内してもらい、バードウォッチングを初体験してみましょう!
まずは水辺に移動して水鳥を観察します。近くで泳いでいたカイツブリをしばらく眺めていると、ふいに水に潜ったまま1分近く経過。「あれ? 見失った?」と思った頃に、かなり離れた場所からひょこっと顔を出したりして、いつの間にかその一挙一動を追うことに夢中になっていました。
「潜水が得意なカイツブリは、深く潜って獲物を探しているんですよ。子どもと一緒に水鳥の潜水時間を数えてみるのもおもしろいですね」と佐藤さん。
耳を澄ますと無数の鳥の声が聴こえてきます。その声に引き寄せられるように歩いていくと、赤い実を付けた木にたくさんの鳥たちが集まっていました。ツグミにエナガ、ヒヨドリ、アカハラ…。
なにやらおかしな動きをしている鳥がいるので双眼鏡を向けてみると、なんとキツツキの仲間のコゲラがコツコツと木を突いている場面に遭遇!
これまで、身の回りの鳥なんてスズメかカラスくらいしか目に入っていなかった筆者ですが、ほんのちょっと注意を向けてみたとたん、今まで見えなかったものが続々と見えてくることに大興奮。それまで全く気にとめていなかった普通の公園の風景が、急に新発見の宝庫のように思えて、なんだかワクワクしてきました。
「ちょっとフィールドを歩いてみるだけで、驚くほど様々な野鳥が生息していることがわかると思います。春先の繁殖期になると、鳥たちがメスを呼ぶ『さえずり』も楽しめますよ。有名なところでは、うぐいすの『ホーホケキョ』も繁殖期のみの鳴き声ですね。自分のお気に入りのフィールドを見つけて年間を通して観察してみると、四季の移り変わりがよくわかり、とてもおもしろいですよ。水元公園でも1年間で150種類くらいの野鳥が見られます」。
近場の公園へ野鳥を探しに出かけよう!
バードウォッチング初心者は、まずは公園などで開催されているバードウォッチングのガイドツアーに参加するのがおすすめです。身近な水辺の公園で観察の練習をしてから、本格的に野山の野鳥を探しに出かけるとより一層楽しめそうです。・ 水元かわせみの里
水辺のふれあいルームでは、休館日、イベント、ボランティア活動日以外の毎日11:00〜11:30、13:30〜14:00にガイドウォークを開催。
・葛西臨海公園
鳥類園で見られる鳥たちを中心に季節の生き物を観察する。毎月第2日曜日の14:00から開催。
・石神井公園
毎月第4日曜日に自然観察会を開催。園内で見られる植物や野鳥の解説を聞きながら園内を散策する。
・静岡県立森林公園
親子で楽しむバードウォッチング入門など、年間を通じて様々な自然観察イベントを開催。
・新潟県立鳥屋野潟公園
鳥屋野潟に集まる白鳥やマガモが観察できるイベントを定期的に開催。
※開催日時は変更になる場合もあります。各々の公園に事前にご確認下さい。
子どもと一緒に楽しむアクティビティとしても最適なバードウォッチング。子どもには入門編としてカワセミのようなインパクトのある鳥を見せてあげると、バードウォッチングに興味を持ちやすいかもしれません。また鳥を間近で見られる動物園で観察した後に、自力で野生の鳥を見つけるとより感動が深まることも。
この冬は、家族揃って水辺の公園でバードウォッチングデビューしてみませんか?
※写真提供:水元かわせみの里