公園や施設へのお出かけはよくするものの、自然豊かなところにあまり行く機会がないという家庭も多いのではないでしょうか。そこで今回は、関東エリアにある「子どもの登山デビューにおすすめの山」を10カ所紹介します。
登山に慣れていない子どもでも登り切れて、ピクニック気分で楽しめる山ばかり。普段アウトドアをしないパパママにも最適です! また、3歳〜4歳になるとトイレも自分で行けるほか、「疲れた」「がんばる」などの言葉も自発的に発するようになる時期なので、登山デビューにおすすめです。それぞれに子どもの年齢の目安もあるので、参考にしてください。
子どもでも登れる山はどんなところ? 必須アイテムは?
今回お話を聞いたのは、子どもとの登山経験も豊富な「信州登山案内人」の栗田朋恵さん。「登山」と聞くと、ハードルが高く感じますが、子どもと山に登りたいと思った場合、どのようなポイントで山を選ぶと良いのでしょうか?
「大人が登るような標高が高く険しい山岳は、小さな子どもにはまだ厳しいと思います。最初のうちはポピュラーな低い山で、コースも短い距離がいいです。例えばハイキングコースが設けられている自然公園のようなところもいいですね。また、登山口が最寄り駅やバス停から近いことも大事なポイントです」
標高が低いとはいえ、山登りに慣れていない親も多いかと思います。準備するものや必須アイテムを教えてください。
(1)飲み物・食べ物
「飲み物や食べ物は山では手に入らないので、必ず持っていきます」
「山登りで汗をかくので『飲み物=スポーツドリンク』と思うかもしれませんが、子どもには甘過ぎてしまう場合もあります。水やお茶だけでは熱中症が心配であれば、子ども用のスポーツドリンクを購入して持っていくなど、大人と分けて用意すると良いですね」
(2)おんぶひも
「3歳くらいの子どもと行くときは必須です。お昼を食べた後などは、ウトウトしたり、ぐずることもあるので、登るペースが落ちることもあります」
「抱っこでは手がふさがってしまいますし、足元が見えにくくなってしまうのでおんぶひもでおんぶをしてあげると、お互い安全ですね」
(3)動きやすい服装&長袖がおすすめ
「山登りは、やはり動きやすい服装がいいです。また、山道で転んでしまった時に手や膝をすりむいてケガをしてしまうこともあるので、なるべく長袖などで肌の露出を避けましょう」
「ただ、あまりに厚着をしてしまうと熱中症になることもあります。Tシャツの上にシャツを羽織る、その上にナイロンジャケットを着る、短パンにタイツを合わせるなど細かく体温調整できる重ね着で工夫しましょう」
(4)カッパ・レインコート
「天気の悪い日はなるべく避けた方がいいのですが、たとえ晴れていても、山は天候が崩れやすいもの。思わぬ雨に見舞われてしまうこともあります。雨具は必ず持っていきましょう。傘は持つと手がふさがってしまうので、カッパがベストです」
標高が低い山とはいえ、相手は自然なのでそれなりの準備は必要ですね。しっかり準備をしましょう。
それでは、栗田さんがおすすめする関東エリアの山を10カ所紹介します! 目安となる所要時間もそれぞれ教えてもらいました。
鎌倉ハイキングコース(神奈川県)
「最初に紹介するのは『鎌倉のハイキングコース』です。街と隣接した山道なので、子どもと一緒に登山するのに適した要素がたくさんあります」
「初めて山を登るときは、なるべく人が多く、人気の山を選びましょう。というのも、人がいないと何かあった時に助けを呼べず、万一の際に不安です。人気のコースはトイレなどの整備も行き届いている場合が多くおすすめです。鎌倉のハイキングコースはいくつかありますが、大仏が見られる『葛原岡・大仏コース』は比較的人が多くいるので安心です」
「大仏ハイキングコースは、北鎌倉駅から近く、坂道も緩やかです。また、途中で中断した際にショートカットで戻れる『エスケープコース』と呼ばれるコースがあり、初心者の親子向きです」
■鎌倉ハイキングコース
エリア:神奈川県鎌倉市
標高:約200m
入山料・登山料:無料
※各お寺での拝観料は別途かかります
目安の年齢:3歳から
所要時間:大仏コースの場合、北鎌倉駅から大仏坂バス停まで約1時間40分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
御岳山(東京都)
「大人向け登山でも人気の御岳山は、週末になると多くの登山客でにぎわいます。御岳山のおすすめポイントは、御岳登山鉄道のケーブルカーです。登山だけでなく、『乗り物に乗る』というイベントは、子どもたちにとってうれしい要素ですよね。ケーブルカーを目指して登ってみようという思いにもつながります」
「また、人気の山なので山道が整備されていて歩きやすく、子どもと一緒の登山にピッタリです」
御岳山へのアクセスは、JR青梅線の御岳山駅からバスで行くのが一般的とのことです。
■御岳山
エリア:東京都青梅市
標高:929m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:3歳から
所要時間:ケーブルカーの御岳山駅(御岳登山鉄道)から周遊コースで約2時間30分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
高尾山(東京都)
「高尾山は都心からも近く、食事や観光も楽しめます。登山コースも豊富に用意されていることで有名な山なので、ビギナーはもちろん、子どもとの登山にある程度慣れてきた中級者にもピッタリです」
「高尾山も御岳山と同じくケーブルカーやリフトがあり、行きは歩いて山頂に向かい、帰りはケーブルカーで下山するなど、疲労感や気分によって選べます」
「たくさんあるコースのなかでも、ある程度慣れてきた中級者へのおすすめは6号路です。このコースの魅力は、川に沿って歩いたり、花や鳥を観察できたりと自然を体感できるところです。経験にもよりますが、子どもが5歳〜6歳くらいからがオススメです」
■高尾山
エリア:東京都八王子市
標高:599m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:(ケーブルカーを利用する場合)3歳から
所要時間:高尾山口駅(京王線)から6号路で登り、高尾山駅(高尾登山鉄道)などを利用して下山した場合は合計約2時間30分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
鋸山(千葉県)
「鋸山は千葉県の人気登山スポットです。山頂まで行くルートがいくつかありますが、鋸山にもロープウェーがあります。標高330mほどの山なので、がんばって登り切ることもできますし、子どもに疲れが見えたら下山をロープウェーに切り替えたりと状況に合わせて利用できます」
「山頂は見晴らしがとても良くて気持ちが良いです。柵はついていますが、高度感があります。分岐も多いため、子どもだけで歩かせないよう、寄り添って行動しましょう」
大きな駐車場もあり、クルマの方も便利とのことです。
■鋸山
エリア:千葉県富津市
標高:330m
入山料・登山料:無料
※山頂は日本寺の境内のため拝観料(大人700円、子供400円)が必要
目安の年齢:4歳から
所要時間:乗り物を使わず登山口から地獄のぞき往復で約2時間30分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
宝登山(埼玉県)
「『長瀞八景』のひとつとしても知られる宝登山は、駅からは多少離れてしまっていますが、山自体は小さな子どもでも登りやすいと思います。登山ルートがいくつか用意されていて、どのルートもそこまで険しい道のりではありません」
「季節に合わせていろいろな花が咲く山なので、歩きながら親子で植物を観察するのも楽しいですね」
■宝登山
エリア:埼玉県秩父郡
標高:497m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:4歳から
所要時間:長瀞駅(秩父鉄道)から山頂往復で約3時間
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
鷹取山(神奈川県)
「JR横須賀線の東逗子駅が最寄り駅で、駅から歩いて10分ほどで登山道に入れます。鷹取山の山頂にある公園の展望台からは、快晴の日は東京スカイツリーやさらには房総半島まで見渡せる絶景ポイントです」
「注目は、長さ30mほどのくさりを伝いながら岩の間を渡る『くさり場』です。ほかの山では味わえないちょっとしたスリルと緊張感があります。普通の低山に慣れてきたファミリーの次なるステップとして、チャレンジ・コースになると思います」
「くさり場を楽しめる年齢は、ある程度手足がしっかりしてきた5歳ごろからがベターです。」
■鷹取山
エリア:神奈川県横須賀市
標高:139m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:4歳から
所要時間:東逗子駅(JR横須賀線)から山頂経由鷹取小学校前バス停下山で約1時間45分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
高麗山(神奈川県)
「高麗山は、ルートの分岐点が多いので見落とさないように登る必要がありますが、山の標高自体はそこまで高くなく、子どもでも登りやすいです」
「山の中を通るルートは、森の雰囲気を楽しめるコースです。登っていくと、湘南平という見晴らしがとても良い大きな敷地に出ます。お弁当を食べるのには最適です! 展望台もあり、湘南の海を眺められますよ」
「ただ、最寄り駅のJR平塚駅から約2kmの道のりを歩かないといけないため、子どもが小さい場合はJR大磯駅またはJR平塚駅からバスに乗って登山口に向かうと良いでしょう」
■高麗山
エリア:神奈川県平塚市〜中郡大磯町
標高:168m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:3歳〜4歳から
所要時間:大磯駅(JR東海道本線)を出発して高麗神社登山口、湘南平を経由して大磯駅着で約2時間
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
大楠山(神奈川県)
「ハイキングコースとして山道が整備されていて、小さな子どもでも登りやすいです。大楠山は春になると山頂付近に菜の花が一面に咲き始めて、桜なども楽しめます。山頂から見渡せる湘南の景色を見ながら食べるお昼ごはんは格別です」
「都心から山へのアクセスは、JR横須賀線の逗子駅からバスに乗り換えて前田橋バス停で下車します。変化に富んでいて景色にあきない山なのでチャレンジしてみてください」
■大楠山
エリア:神奈川県横須賀市
標高:242m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:4歳から
所要時間:前田橋バス停から山頂往復で約3時間
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
大野山(神奈川県)
「今回紹介する山の中では比較的標高が高い山です。道も舗装済みのところと未舗装のところがあり、上に行けば行くほど道も険しくなっていくので、初めてだと大変かもしれません」
「経験値によって、5歳〜6歳の子どもから大丈夫だとは思いますが、できれば子どもが小学生になってからがおすすめです」
「また、電車での移動時間が必要なため長時間行動に慣れているファミリー向きといえます」
■大野山
エリア:神奈川県足柄上郡
標高:723m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:7歳から
所要時間:谷峨駅(JR御殿場線)から山頂往復で約3時間30分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
金毘羅山(東京都)
「金毘羅山には、アスファルト舗の歩きやすい道がいくつかあり、子どもと一緒の山登りに最適です。山登りに少し慣れた親子向きですね」
「山頂付近にある巨岩が有名で見ごたえがあります。山頂付近になるにつれ、道も険しくなっていくため、子どもが5歳くらいになってからのチャレンジがおすすめです」
「5月から夏ごろにかけて、アジサイが見ごろを迎えます。木々が生い茂って森林浴にも向いていますよ」
■金毘羅山
エリア:東京都あきる野市
標高:468m
入山料・登山料:無料
目安の年齢:5歳から
所要時間:武蔵五日市駅(JR五日市線)から山頂往復で約2時間30分
※上記は大人が歩く速度での所要時間、休憩時間は含みません
親子での登山ならではの注意点は?
最後に、親子で登山をする際のポイントや注意点を教えてもらいました。
(1)朝早くから登山を開始する
「公式サイトやガイドブックなどには、登山時の所要時間が記されている場合が多いです。子どもが一緒の場合は、単純計算で約2倍かかると考えましょう」
「山頂などでお昼ごはんを食べた後ですと、子どもたちは眠くなってしまいペースが落ちてしまうこともあります。このようなプランの場合、朝8時くらいには家を出て、遅くとも10時には登山を開始しましょう」
(2)なるべく公共機関を使って移動する
「子どもと移動する際は自家用車が楽と思いがちです。ですが、休日の場合、山の近くの駐車場はどこも混んでいて止められないことも多く、周辺の道は渋滞して時間が読めないことも…。車に長時間いることでぐったりしてしまう子もいるので、なるべく時間が読める電車やバスを使うのも一つの手です」
(3)子どもとは「1人で先に行かないこと」を約束する
「お出かけとなるとテンションが高くなるのが子どもです。ついつい1人でどこかに行ってしまう子どもも少なくないと思いますが、山ではぐれてしまっては大変です! 『必ず親と一緒に行動する』『1人で勝手に行かない』ことを子どもと約束しましょう」
自然相手なだけに、慣れないうちがヒヤッとすることもありますが、栗田さんがポイントとして挙げてくれたことをしっかり覚えておきましょう。親子でしっかりルールを決めて、「自然のアスレチック」を思いっきり楽しみましょう。
お話を聞いたのは…
栗田朋恵さん(信州登山案内人)
神奈川県在住。長野県認定の登山ガイド。幼児からの山歩きワークショップを行う『外あそびtete』主宰。長野県白馬山麓で宿泊とトレッキングをセットで体験できる宿、白馬の里シェーン・ドルフユースホステルを運営している。