静岡県にあるショッピングセンター「サントムーン柿田川」に、魚の赤ちゃんである「幼魚」をテーマにした「幼魚水族館」がオープン! 館長を務めるのは岸壁幼魚採集家の鈴木香里武さんです。実際に幼魚水族館を取材し、見どころをまとめました。
※取材日:2022年7月6日(水)
「幼魚水族館」とは?
日本各地の漁港でタモ網で幼魚をすくう「岸壁幼魚採集」を30年近く実践している鈴木香里武さん。幼魚に魅せられた香里武さんの「頭の中を具現化しよう」をコンセプトに作られた日本で唯一の「幼魚」がテーマの水族館です。
幼魚は小さくてかわいいだけでなく、外敵に見つかると食べられてしまうため、毒やトゲなどの武器を持っていたり、周囲と同化する「擬態」など、さまざまな「生き残り戦術」を持っています。また、成魚とは姿が違うこともあり、いまだ生態がよくわかっていない幼魚もたくさんいます。
幼魚水族館では、自分たちの身近な漁港の「足元の海」に、未知なる幼魚たちの世界が広がっていることを教えてくれます。幼魚の生き様を知ることで、生物の多様性や環境問題にも関心が向けられるようになっている施設です。
【アクセス】土日は三島駅から無料のシャトルバスが運行
幼魚水族館は、静岡県駿東郡清水町にあるサントムーン柿田川の「オアシス」棟の3Fにあります。土日に限り、JR・伊豆箱根鉄道の三島駅からサントムーン柿田川まで無料のシャトルバスが出ています。三島駅からはクルマでおよそ12分、徒歩では約35分の道のりです。
沼津の漁港を再現!水槽内の「ゴミ」にも注目!
幼魚水族館の入口付近にある「漁港〜幼魚は擬態の天才〜」のコーナーでは、鈴木香里武さんが実際に伊豆の漁港で採集してきた幼魚が展示されています。同じ漁港でも季節によって採集できる幼魚が異なるため、季節ごとに違う幼魚が見られるのが特徴。
この水槽では香里武さんが実践しているように、水面から幼魚を探すことができます。水槽には実際に港から拾ってきたゴミも一緒に展示してあり、そのゴミにも幼魚が隠れています。
香里武さんによると「ゴミは『汚い』とか『悪者』という見せ方だけではなく、そのゴミさえも利用して幼魚たちが身を隠して生き残っているという『幼魚のたくましさ』を知ってもらいたいです」とのこと。そこから海の環境問題にも興味を持ってもらいたいという狙いもあります。
水槽の上を見上げると、タモ網を持った香里武さんのイラストが! まるで、こちらが幼魚になったような気分が味わえます。
海藻やロープなどに隠れている魚を見つけるのは、まさに「間違い探し」のようです。子どもも大人も「幼魚たちとの知恵比べ」に夢中になれます。
ビニール袋が漂う中に、クラゲの赤ちゃんがいます。一見似ているので、ウミガメなどが間違えて食べてしまうことが問題になっています。
水槽にある魚名板(魚の名前や姿が描かれた解説ボード)のイラストと文字は、館長である鈴木香里武さんによるものです。キャッチコピーやコメントに愛があって、すべて見たくなります。
じつは水槽には魚名板に書かれていない幼魚もいます。そうした魚を写真に撮って、図鑑などを使って調べてみるのもおすすめの楽しみ方です。
幼魚たちの「生き残り戦術」を観察!
小さな幼魚の生き残り戦術のひとつが「武器を持つ」こと。「危険な幼魚」コーナーでは、剣山のようなトゲを持つガンガゼをはじめ、長い進化の過程で武器を手に入れた幼魚や幼生が展示されています。
モンハナシャコは鎌をさかさまにしたような形の「捕脚」を持っていて、そのパンチで巻貝や甲殻類の殻を叩き割って捕食します。取材に訪れたときは巣を作っている最中で、耳を澄ますとパンチで石や貝を砕く音が聞こえていました。
「幼魚と成魚を見比べる展示」で成長後の姿もわかる
個体によっては、幼魚と成魚で見た目が大きく変わることがあります。幼魚と成魚を見比べられる展示があるのも、この水族館の特徴です。上の写真のハナヒゲウツボは幼魚のときは黒い色で、成魚になると青色に! さらに成長すると全身黄色になり、性別もオスからメスに変わります。
ハナミノカサゴは幼魚と成魚で見た目は大きく変わりませんが、サイズやヒレの太さがまったく違います。
ミノカサゴの成魚は、幼魚のときよりもヒレが大きく成長。サイズの違いを隣同士の水槽で見比べられます。優雅に広げているヒレには毒があり、外敵を近づけさせない狙いがあります。
鈴木香里武さんの幼カリブ(少年時代)と成カリブ(現在)が比較できるコーナーもあります。一緒に写真を撮るポイントとしてもおすすめです。
独自の企画や幼魚にかかわる人たちとのコラボコーナーも!
「館長が選んだ幼生アイドル」は、鈴木香里武さんが独断と偏見で選んだ「漁港で会えるアイドル幼魚」がランキング形式で展示されています。ほかのコーナーとは違ったアイドル風の飾りつけにも注目!
海洋生物を撮影する写真家・峯水亮さんとのコラボコーナーでは、深海を思わせる漆黒の空間に、まだ深い海へ下る前の浅瀬で生きる深海生物たちの美しい写真が展示されています。
「本当の海を知らない幼魚」コーナーでは、トラフグやマダイなど、水族館や食卓で出会える人工繁殖された幼魚が集められています。
このコーナーには液晶ディスプレイが設置されていて、ふ化直後の写真などを見ることができます。
液晶ディスプレイは時間経過によって違う映像が映し出され、なかには生産者のお名前と写真も出てきます。
館長の鈴木香里武さんは、公式サイトで「生き物を知る、育む、伝える。その根っこには、必ず人の想いがあります。ある種類に強く心惹かれ、徹底的に向き合ってきた人がいるからこそ、僕たちはその生き物の存在に触れることができるのです」と語っています。いつも食べている魚は、誰かの並々ならぬ情熱によって食卓まで届けられていることを実感できるコーナーですね。
中部大学で魚に関する研究をしている武井史郎先生による、幼魚の透明標本も展示。
特殊な液体で骨や内臓などを残したまま透明になっているので、幼魚の体の中をすみずみまで観察できます。
オリジナルグッズもあるお土産売り場にも注目!
幼魚水族館に隣接する「幼魚屋」では、幼魚にちなんだお土産品が買えます。
注目は幼魚水族館オリジナルのお菓子たち。本物のリュウグウノツカイの幼魚の長さが実感できるバウムクーヘンなど、見た目がユニークな商品が並んでいます。
包装に使われているのは生分解プラスチックの「バイオニュート」で、使ったあとは水と二酸化炭素に分解されて自然に還るようになっています。さらに印刷は「水なし印刷」で川や海を汚さないようになっていて、環境のことを考えて開発されたお土産です。
館長の鈴木香里武さんが手描きした「魚名板」のイラストがキーホルダーや缶バッジになっています。幼魚水族館内で気に入ったイラストがあったら、ぜひ購入しましょう。
そのほか、ウミウシマグネットやぬいぐるみ、ノートなどの文房具、ポスターなど、かわいいお土産がたくさん!
幼魚が胸元にワンポイントで描かれている、オリジナルデザインのTシャツも販売されています。ここでしか買えないお土産が多いので、じっくり時間を取って見ていくのがおすすめです。
また、姉妹サイト「未来へいこーよ」では、幼魚水族館の館長で岸壁幼魚採集家の鈴木香里武さんに見どころを紹介していただいた記事を掲載しています。幼魚水族館の楽しみ方がわかる内容になっていますので、おでかけ前にぜひご一読ください。
■幼魚水族館
所在地:静岡県駿東郡清水町伏見52−1 サントムーン柿田川 オアシス棟3F
料金:
【入園料】成魚(大人)1,200円、若魚(中・高生)1,000円、幼魚(小学生)600円、稚魚(幼児)400円、仔魚(3歳以下)無料
営業時間:10:00〜18:00(最終入館17:00)
休園日:サントムーン柿田川に準拠