子どもが大好きな新幹線のなかでも、とくにレアな存在なのが「ドクターイエロー」。旅客用ではないので馴染みは薄い電車ですが、図鑑やアニメ、おもちゃなどで目にすることも多く、年齢問わず人気があります。
そこで今回は、子どもに思わず話したくなるドクターイエローの基礎知識&トリビアを紹介! 本物を見るためのテクニックもお届けします。
大人気の「ドクターイエロー」とは?
ドクターイエローと呼ばれる車両は、正式には「新幹線電気軌道総合試験車」という名称で、700系をベースにした専用車両「923形」が使われています。車体はアルミニウム合金で、最高時速は270km。実際に走行しながら線路や電気設備に異常がないか検査しています。
Q1.いつ、どこを走っているの?
ドクターイエローは東海道・山陽新幹線(東京駅〜博多駅)で運用されています。検査のペースは10日に一度ほど。1日目に東京を出発し博多へ、2日目に博多から東京へ戻ります。
Q2.どうして車体が黄色いの?
ドクターイエローは保守点検用車両の定番である黄色に塗装されています。夜間に作業を行うことが多い保守点検用の車両は、目立ちやすい黄色が多く、ドクターイエローもその伝統を引き継いだものです。先代の「922形」も同じカラーリングをしています。
また、通常の新幹線と形が似ていることから、乗客が間違って乗ってしまうのを防ぐ意味もあるそうです。
Q3.ドクターイエローはいくつあるの?
ドクターイエローは、JR東海が管理するT4編成とJR西日本が管理するT5編成の2編成があり、先頭車両の窓と乗務員扉に書かれた「T4」「T5」の文字で見分けがつきます。車両構成は同じで、数カ月ごとに交代で運行しています。
Q4.ドクターイエローの車内には何があるの?
ドクターイエローは7両編成で、各車両に計測用の機器が搭載されています。
【車両構成】
■1号車 電気試験車:観測ドームや線路確認用カメラなどの映像をモニタリングできる。車体横にはすれ違う新幹線を確認するセンサーを搭載。
■2号車 電気試験車:車両の上に集電・測定のパンタグラフがあり、主に電線の状態を検査する。
■3号車 電気試験車:観測ドームがあり、2号車のパンタグラフを監視する。
■4号車 軌道試験車:線路に異常がないか、レーザーの光を当てて状態を検査する。
■5号車 電気試験車・休憩室:観測ドームがあり、6号車のパンタグラフを監視する。休憩室にはベッドになる椅子がある。
■6号車 電気試験車・ミーティングルーム:データを変換する高圧室や資材保管室などがある。また、2号車と同じパンタグラフが2つある。
■7号車 電気試験車・添乗室:視察などで使用する添乗室があり、大型ディスプレーが設置されている。座席は50席。1号車と同じ線路監視モニターなどがある。
ドクターイエローを見る方法は?
運行日が公開されておらず時刻表に載っていないドクターイエローは、本物を見るのが難しい車両です。そこで実際に走っているところを見るためのポイントを紹介します。
ポイント1.運行2日目の上り(東京行き)を狙う
ドクターイエローは10日に1回ほどのペースで運行されていて、そのとき2日かけて東京駅〜博多駅間を往復します。つまり、1日目となる下り(博多行き)の目撃情報を入手できれば、翌日の上り(東京行き)を狙って待ち構えることができます。ドクターイエローの運行情報をまとめたファンサイトやツイッター、インスタグラムなどのSNSで情報収集をしてみましょう。
なお、ドクターイエローの運行には、のぞみと同じ駅(東京−品川−新横浜−名古屋−京都−新大阪−新神戸−岡山−広島−小倉−博多)に止まる「のぞみ検測」と、こだまと同じ各駅停車の「こだま検測」が存在します。集めた情報をふまえて待ち構える駅を決めましょう。なお、のぞみ検測3回にこだま検測1回くらいのペースで行われているようです。
ポイント2.電光掲示板の「980番台回送電車」に注目
目撃情報を参考に駅のホームへ行ったら、「電光掲示板」の発車案内を確認しましょう。ドクターイエローは列車名が「回送」、列車番号が「980番台」と表示されることが多いので、それを見ればどの電車のあとにどのホームへ入線するかわかります。
ポイント3.ホームの進行方向の1両目最前で待とう
ドクターイエローは通常の新幹線より短い7両編成なので、ホームのどの位置で待つかもポイント。上りも下りも進行方向の先頭付近に合わせて停車するので、進行方向を確認して前の方で待つと車両の先頭を見やすくなります。
ドクターイエローの穴場スポット「大井車両基地」
「ドクターイエロー」が見られるスポットとして鉄道ファンに有名なのが「大井車両基地」(東京都品川区)です。敷地内に入ることはできませんが、周辺の歩道橋などから見られることがあります。
イベントでドクターイエローに乗れる!?
JR東海では年に1回、静岡県にあるJR東海の浜松工場で「浜松工場 新幹線なるほど発見デー」という入場無料のイベントを開催しています。普段は見ることができない「新幹線の車両工場」を見学できるだけでなく、「ドクターイエローの車内見学」(事前申し込み制)が開催されることも!
これまで開催は例年7月でしたが、2018年は9月16日(イベントの詳細は6月下旬発表)でした。2019年のイベントに参加するなら、5〜6月頃には情報収集した方がよさそうです。
「リニア・鉄道館」で引退したドクターイエローに会える
愛知県名古屋市にある「リニア・鉄道館」は、東海道新幹線を中心にリニア新幹線や在来線など鉄道に関する展示が楽しめる博物館です。ここではさまざまな新幹線とともに、かつて運行された先代ドクターイエロー「922形」が展示されていて、間近で見学することができます。
貴重&レアなドクターイエローの仲間たち
線路を検査する車両はドクターイエロー以外にもあるので、ここで紹介します。
East i(イースト・アイ)
「E926形新幹線電気・軌道総合試験車」・通称「East i」(イースト・アイ)は、E3系新幹線をベースに設計された点検用の車両です。主にフル新幹線規格の東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線・北海道新幹線、ミニ新幹線規格の山形新幹線・秋田新幹線の6路線で検査に使われています。
最高時速275kmで走行しながら検測可能で、「検測車両における世界最高速度」としてギネス記録に認定されています。
East i-D(イーストアイ・ダッシュディー)/Easti-E(イーストアイ・ダッシュイー)
JR東日本は在来線用検査車両も所有しています。非電化区間向けのディーゼル車「キヤE193系」(通称East i-D/イーストアイ・ダッシュディー)と、電化区間向けの「E491系」(通称East i-E/イーストアイ・ダッシュイー)です。
JR東日本の路線以外にも、JR貨物やJR北海道、私鉄にも貸し出されています。
レール探傷車
超音波でレールの傷を探す保守車両です。ドクターイエローだけでは見つけきれない小さな損傷もこの車両で見つけ出すことができます。写真はJR九州で使用されている車両です。
レール削正車
列車の重さで磨耗したレールを保守する車両です。車両に取り付けられたグラインダーなどで削って滑らかにします。写真の車両は2018年4月にJR東海が導入した在来線向けの新型で、スイスのスペノ・インターナショナル社製。時速8km程度(1時間あたり300m)でレール削正が可能です。
子どもに人気のドクターイエローについて詳しく解説しました。狙って遭遇するのはなかなか難しいですが、今回の記事を参考に親子でドクターイエロー探しを楽しんでみてください。