世界にはたくさんの鉄道があり、洗練されたフォルムや、自然の中、街中を走る様に魅せられる人は多いもの。日本の鉄道とはまた違った魅力がたっぷりですよね。
そこで、RailPlanet.netの運営者であり国内外の鉄道に詳しい小佐野カゲトシさんに、「親子で行きたい世界の鉄道」を5つ挙げていただきました!
海外鉄道旅の魅力とは?
そもそも、海外での鉄道の旅にはどんな魅力があるのでしょう? 小佐野さんご自身が海外の鉄道に初めて興味を持ったのは、小学校高学年の頃だったそう。
「もともと日本の電車が好きで、幼い頃から国内のいろいろな路線に乗って楽しんでいたのですが、1989年ベルリンの壁崩壊のニュースを見て、初めて『外国』というものに興味を持ちました。そこで改めて鉄道の本などを見てみると、海外にもいろんな鉄道があることを知り、これは面白いなと思ったのがきっかけです。」
以降、世界各国の鉄道に関心を持つようになり、やがて様々な国を巡るようになったそうです。
日本の鉄道との違い
では、海外の鉄道と日本の鉄道、違いは何でしょうか?
「第一に、デザイン。フォルムや配色など、その国の特色がよく出ていて見ているだけで面白いです。それから、大きさもスケールが違います。アメリカの普通列車は日本の新幹線くらいの幅と長さがありますし、大陸を横断する2階建ての列車なんて、見上げる程の大きさです。また、地続きのヨーロッパでは、ひとつの国にいても様々な国の車両が入ってきます。オランダのアムステルダムの駅ですと、ベルギーやドイツ、ポーランドの車両まで見ることが出来るんですよ。」
なんだか想像するだけでワクワクしてきますね。鉄道好きなお子さんなら大興奮しそうです!
親子での海外鉄道旅 そのメリットとは
単身で行くよりも、楽しい反面いろいろと苦労も多くなる親子での海外鉄道旅。でも、小佐野さんいわく、楽しい想い出ができること以外にも、子どもにとって様々なメリットがあるんだとか!
「自分自身、海外の鉄道に触れてから、世界がぐんと広がりました。例えば『言語』。
中学になって英語の授業が始まったとき、抵抗なく受け入れられたのは、海外の鉄道に興味を持っていたおかげです。また、世界のニュースも身近に感じることができ、地理にも強くなりました。実際に海外へ親子で行った際は、簡単な現地の言葉を教えて、窓口でお子さんに切符を買わせたりするのもいい経験ですね。ある程度の年齢の子どもなら、駅にある看板の言語表記や車両に貼ってあるステッカー等に注目してみても、いろいろな発見があると思いますよ。」
実際に海外鉄道旅を楽しもう!
では実際に、海外での鉄道旅の楽しみ方を小佐野さんに挙げてもらいました。
楽しみ方1:日本の鉄道との違いを探そう!
「海外の鉄道は日本とは違う部分がたくさんあります。デザインはもちろん、車内のつり革の位置や椅子の形状、材質なども国によってまったく異なります。例えば海外の地下鉄の座席は、ベンチのようなステンレス製やプラスチック製が多いんですよ。そんな様々な違いをお子さんと見つけてみると楽しいですね。」
楽しみ方2:現地の食べ物に注目!
「海外旅行の楽しみのひとつに、『現地での食事』がありますよね。今でこそかなり数は減ってしまいましたが、食堂車がある列車もありますし、駅構内で販売されている食べ物に注目してみると、国の違いがよく出ていて面白いです。最近では、台湾の駅弁がかなりブーム。駅の構内に商業施設が充実している国も多いんですよ。」
楽しみ方3:列車に乗れなくても、ホームに行ってみよう!
「旅のスケジュールの関係でお目当ての列車に乗れない場合でも、ぜひ駅まで行ってみてください。国によっては駅に改札口が無く、ホームに自由に出入りできます。駅のカフェテリアでお茶をしながら、駅構内や列車の発着を眺めているだけでも十分楽しめますよ。」
海外で鉄道を気軽に利用するには
とはいえ、海外の鉄道に乗ることが一番の目的で海外旅行に行く人は余程の鉄道ファン…。多くの場合は、海外旅行に行ったついでに鉄道も楽しむ、というケースではないでしょうか?
「海外での鉄道を気軽に楽しむ方法としては、例えば、面倒だからとタクシーを使いがちな空港から市街地への移動に、あえて『鉄道』を使うのがオススメです。他の交通手段と比べても、最も速くて安いですから。リニアモーターカーや、急行路面電車に乗れる国もありますよ。現地滞在中でも、地下鉄や路面電車など、比較的気軽に利用しやすいものがあれば、是非チャレンジを。特に路面電車は、車窓からの景色も楽しめますし、地元の人の生活が見えるので良い社会勉強にもなると思います。」
親子で乗ると楽しい世界のオススメ鉄道5選
ここで、小佐野さん厳選「親子で気軽に楽しめる世界の鉄道」を5つご紹介します。
【香港】2階建て路面電車
何といっても、2階建てなので景色が最高。香港のICカード「オクトパス」で乗ることが出来るので、観光としても移動手段としても利用しやすいです。
早朝から深夜まで走行しており、地元の人も多数利用しています。せっかく乗るなら2階席最前席がオススメ。大きな看板が迫ってくる大迫力の景色が楽しめます。
停留所の間隔が短いので、万が一乗り過ごしても安心。電車はどれも全面広告でカラフルですが、120号という1950年代のデザインが施されている車両が1つだけあり、これを見つけたらラッキー!(写真が120号列車)運賃:大人1回2.30HKD(約35円)。
【台湾】平渓線
新北市瑞芳区の三貂嶺駅から同市平渓区の菁桐駅間の渓谷沿いを約1時間程度走る、日本時代に建設された人気のローカル線。地元の人にも大人気のため、休日はとても混雑しているので注意。
本数は1時間に1本程度。途中の十分駅では、願い事を書いたランタン(天燈:紙で出来ており、墨と筆で願い事を書き、火を付けて空に飛ばす気球のような物)を上げるのが名物です。「十分大瀑布」という滝も有名。
また十分駅から徒歩20分程度の場所にある「新平渓煤鉱博物園区(旧台湾炭鉱博物館)」では、かつての炭鉱電車に乗れるのでオススメ。江ノ電の使用済み1日乗車券(のりおりくん)とパスポートを提示すると、台北駅などで平渓線1日周遊券がもらえるキャンペーンも実施中。(2016年3月31日まで)
【タイ】マハーチャイ線・メークローン線
本来は「メークローン線」として1本の路線だが、タイの中部にあるターチン川で分断されていて、バンコク寄りの東線(ウォンウィエンヤイ駅〜マハーチャイ駅)を「マハーチャイ線」、西線(バーンレーム駅〜メークローン駅)を「メークローン線」と呼ばれている。メークローン線終点には線路の両脇に市場があり、その間を列車が走る様は迫力満点!
ただし本数が少ないので、事前に時刻表を確認しておくべし。終点のメークローンまで行けなくても、マハーチャイ線に乗るだけで、タイの雰囲気は十分に楽しめます。
【マレーシア】マレー鉄道
マレー半島南部に位置するマレーシアを縦断する鉄道路線。寝台列車(タイからマレー半島を縦断、かつてはシンガポールへと走っていたが、2011年にシンガポール国内の区間が廃止になったため、現在では国境越えは体験できない)が有名だが親子での利用はなかなかハードルが高いため、クアラルンプールからイポーまで(約2時間)といった近距離での利用がオススメ。
いわゆる「マレー鉄道」はマレー半島西海岸を走るが、東海岸を走る「ジャングルトレイン」と呼ばれる路線には、昔の日本のブルートレインも走っていて鉄道好きにはたまりません。景色も素晴らしいです。
日本からネット予約ができ、空席状況も見ることができます。切符も自宅でプリントアウトして持っていけるので便利。
【スイス】ベルニナ線
スイスのサンモリッツからイタリアのティラノまで、高低差1824mの起伏あるルートを約2時間で駆け抜ける。とにかくその景色が美しいです。
イタリアのティラノ発の列車だと、はじめは路面を走り、次第に緑が眩しいアルプスの草原が、さらに木の生えない岩山の山岳風景へと景色がめまぐるしく変化していく様子は圧巻。
ビューポイントとしては、イタリア側に近いブルシオ駅近くでは石造りのループ橋が、また最高地点(2253m)のオスピツィオ・ベルニナ駅付近では、氷河の溶け氷が混じった不思議な色の湖ラーゴ・ビアンコが見られます。
日本の箱根登山鉄道が建設時に参考にした路線で姉妹鉄道になっており、日本語の看板が設置されている駅もあるので探してみると面白いです。
海外での鉄道旅 注意点
楽しい海外鉄道旅、しかしながら日本とは勝手が違うので、注意すべき点もいくつかあります。
治安の悪い場所をあらかじめチェックしておく
観光スポットの多い都心部の電車は旅行者でも気軽に乗れる機会が多いですが、国によっては治安に注意が必要。途中下車すると危ない場所を事前に調べておくと安心。
ICカードや一日乗車券をうまく利用する
都市内の乗り物は、一日乗車券や他の交通機関との共通カードが整備されていたり、ICカードが普及している国も多いので、ガイドブックやネットで下調べしておくとお得。
写真が禁止の国やエリアもあるので注意
オススメした5つの路線は問題ないですが、国によっては列車の写真を撮るのがNGの場所もあるので、ガイドブックなどで調べておくと安心。
なるべく荷物は少なめに
国内旅行でもいえることですが、できるだけ荷物は少なくしておくべき。子連れならなおさら。搭乗口が狭かったり階段が急な列車もあり、またスリに遭う危険性も高くなるので、駅のロッカーや荷物預かり所をうまく利用しましょう。
気軽に行けるアジアにも興味深い列車がたくさんありますし、鉄道旅をメインにしなくても、観光のついでに乗るだけでも楽しそう! ぜひ親子での海外旅行では、鉄道旅を計画してみてはいかがでしょうか? 楽しい想い出と共に、子どもにとっても学びの場となりそうです!