次世代の新幹線ともいえる「リニア新幹線」が、2027年の東京〜名古屋間で開業予定です。
そこで今回は、リニア新幹線をはじめとする「リニアモーターカー」について、思わず子供に教えたくなる基礎知識をわかりやすく解説します。
また、リニア新幹線が見られるおでかけ先もあわせて紹介!
「リニア新幹線」とは?
リニア新幹線は、既存の新幹線を超える高速鉄道として、JR東海が開発・整備を進めている鉄道路線。東京の「品川駅」付近から、名古屋を経由して大阪までを結びます。一般向けには「リニア中央新幹線」という名称が使われています。
磁力を使って走るリニアモーターカーの一種で、「超電導リニア」という技術を採用しているのが特徴です。
「リニア新幹線」の速度はどのくらい?
2019年10月まで試験走行を行っていた「L0系」が、2015年に時速603kmという鉄道の世界最高速度を記録。現在、新幹線の営業速度は最高時速320kmですが、リニア新幹線は時速500kmでの営業を予定しています。
東京〜名古屋を最速40分、東京〜大阪間を最速67分で結ぶとされ、新幹線・のぞみの半分程度の時間で移動できるようになります。
「リニア新幹線」が開業するのはいつ?
開業時期は、2027年に東京〜名古屋間が予定されています。さらに、2045年に名古屋〜大阪間も開業予定ですが、最大8年前倒しでの開業を目指しています。
現在は、東京〜名古屋間で軌道や駅などの建設が始まっていて、走行試験が行われている山梨県のリニア実験線も営業路線の一部として使われます。
浮上して走る「超電導リニア」の仕組みを知ろう!
新幹線をはじめとする一般的な鉄道は、レールの上を車輪で走ります。ですが、リニア新幹線は、電磁石に電気を流すと発生する磁力により、約10cm浮上して走ります。これを「磁気浮上式」といいます。
具体的に、車体の側面と、リニア新幹線が走るコース(ガイドウェイ)の側壁にそれぞれ電磁石があり、磁石のS極とN極を高速で切り替えることで、吸引・反発する力が発生し、前進・浮上する仕組みです。
なかでも、車体の電磁石は「超電導磁石」という特殊なもので、液体ヘリウムでマイナス269度まで冷やされており、電気が抵抗なくスムーズに流れる「超電導(超伝導とも)」という状態になっています。
これによりエネルギーロスを減らし、大きな磁力を発生させることができ、高速走行を実現させています。これを「超電導リニア」といいます。
ただし、リニア新幹線の場合は、常に浮上しているわけではなく、時速約150kmを超えるまではゴムタイヤで走行します。
今乗れる磁気浮上式リニア「東部丘陵線 Linimo(リニモ)」
リニア新幹線に乗れるのはまだ先ですが、現在すでに磁気浮上式のリニアモーターカーが愛知県で運行しています。名古屋市と豊田市を結ぶ「愛知高速交通東部丘陵線」(通称:Linimo/リニモ)は、日本初となる磁気浮上式の鉄道路線です。
超電導リニアを採用しているリニア新幹線とは違い、リニモはHSSTと呼ばれる通常の電磁石を使った方式です。車両下部の、コの字状の部分にある電磁石がレールの下にくるよう配置されていて、磁力で下からレールを引きつけることにより、1cmほど浮いた状態で走行します。
レールと車輪が接触する一般的な鉄道と比べて騒音や振動が少なく、乗り心地がよいのも特徴です。
現在、日本で磁気浮上式のリニアモーターカーに乗れるのは、この路線だけです。リニモが敷地に沿って走る「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」では、隣接する「愛・地球博記念公園駅」のみ入場・出場できる「リニモ体験乗車券」(大人400円、子供200円/当日のみ有効)を販売しているので、公園におでかけしたときも気軽に乗れますよ。
浮かない「鉄輪式リニアモーターカー」とは?
リニアモーターカーというと、これまで紹介してきた磁力で浮いて走るものを想像する人が多いかもしれませんが、一般的な電車と同じように車輪で走る「鉄輪式」も存在し、全国各地で運行しています。
車両が車輪で地面に接している点は一般の電車と変わりませんが、回転するモーターで車輪を回して自走するのではなく、車両下部の電磁石と、レールの間にあるリアクションプレート(金属板)の間で磁力が作用して、前に進む力を得る仕組みになっています。
リニアモーターは、回転するモーターよりも場所を取らず、車両を小型にできます。そのぶんトンネルを小さくして建設コストを下げられることから、地下鉄に多く利用されています(ミニ地下鉄ともいわれます)。また、急勾配や急カーブに強いのも特徴です。
ここでは、日本で現在運行している鉄輪式リニアモーターカー路線を紹介します。
都営地下鉄大江戸線【東京都】
日本で2番目に開業したミニ地下鉄。都営地下鉄の中で唯一、他社路線との直通運転がなく、全線・全駅が地下にあります。
■開業/1991年12月10日
■営業区間/都庁前駅〜光が丘駅
■最高時速/70km
横浜市営地下鉄グリーンライン【神奈川県】
リニア式の地下鉄では国内最高速度。地下と地上のどちらも走行します。
■開業/2008年3月30日
■営業区間/中山駅〜日吉駅
■最高時速/80km
仙台市地下鉄東西線【宮城県】
鉄輪式リニアが得意とする急勾配や急カーブが多い路線で、八木山動物公園駅は日本で最も標高が高い地下鉄の駅です。地下と地上のどちらも走行します。
■開業/2015年12月6日開業
■営業区間/八木山動物公園駅〜荒井駅
■最高時速/70km
大阪市高速電気軌道長堀鶴見緑地線【大阪府】
1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会(花の万博)」のアクセス手段として、日本で初めて開業した鉄輪式リニアモーター方式のミニ地下鉄。全線・全駅が地下にあります。
■開業/1990年3月20日
■営業区間/大正駅〜門真南駅
■最高時速/70km
大阪市高速電気軌道今里筋線【大阪府】
長堀鶴見緑地線と同じく、鉄輪式リニアモーター方式を採用したミニ地下鉄。全線・全駅が地下にあり、新森古市駅〜清水駅間に、日本の地下鉄で最も急なカーブ(半径83m)があります。
■開業/2006年12月24日
■営業区間/井高野駅〜今里駅
■最高時速/70km
神戸市営地下鉄海岸線【兵庫県】
日本で3番目に開業した鉄輪式リニアモーター方式のミニ地下鉄。全線・全駅が地下にあります。2005年公開の映画「交渉人 真下正義」では、運用されている5000形車両の実物がロケに使われました。
■開業/2001年7月7日
■営業区間/新長田駅〜三宮・花時計前駅
■最高時速/時速70km
福岡市地下鉄七隈線【福岡県】
全線・全駅が地下にありますが、橋本車両基地が地上にあり、非営業区間ながら鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄で初めての地上区間を設けた路線です。
■開業/2005年2月3日
■営業区間/橋本駅〜天神南駅
■最高時速/時速70km
「リニア新幹線」が見られるスポット!
リニア新幹線はまだ開業前ですが、実験に使用された本物の車両や、実際に走っているところが見られるスポットがあります。乗り物好きの子供が楽しめる施設なので、ここで紹介します!
山梨県立リニア見学センター【山梨県】
「山梨県立リニア見学センター」は、リニア新幹線の走行試験を行う山梨リニア実験線に隣接する施設。実際に試験車両が走行するところを見学できるスポットです。
また「どきどきリニア館」では、2003年に当時の世界最高速度581km/hを記録した「MLX01-2」の実物車両をはじめ、巨大ジオラマ模型やシアター、超電導リニアの仕組みがわかる展示などがそろいます。
実際に磁気浮上走行を体験できる「ミニリニア」は子供に大人気! また、リニア実験線での走行試験の様子が見られる見学テラスもあります。
2020年2月現在、新たな試験車両の導入のため、走行試験は中止されていますが、2020年5月ごろに新車両がお目見え予定です。
■施設情報
入館料/大人420円、高校生310円、小中学生200円、未就学児無料
休館日/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
アクセス/JR中央線「大月駅」からリニア見学センター行きバスで約15分
リニア・鉄道館【愛知県】
名古屋市にある「リニア・鉄道館」は、全国屈指の鉄道博物館です。入館すると、最初に超電導リニアの試験車両「MLX01-1」が見られます。
山梨県立リニア見学センターにあるMLX01-2と同時に製造されましたが、先頭車両の形状が違います。MLX01-2は丸みを帯びた「エアロウェッジ型」。リニア・鉄道館のMLX01-1は平らに尖っている「ダブルカスプ型」なのが特徴です。
ほかにも歴代の東海道新幹線や、JR・国鉄時代の在来線など39両の実車が展示。
運転や車掌体験ができるシミュレーターのほか、日本最大級の鉄道ジオラマ模型やプラレールで遊べるキッズスペースなどもあるので、親子で1日楽しめます。
■施設情報
入館料/大人1,000円、小中高生500円、未就学児200円、3歳未満無料
休館日/火曜(祝日の場合は翌日。GW、春・夏休みは開館)、年末年始
アクセス/名古屋臨海高速鉄道あおなみ線「金城ふ頭駅」から徒歩約2分
リニア新幹線に乗れるのは、まだまだ先のことですが、意外と身近なところにリニアモーターカーは走っています。リニア新幹線に出会えるおでかけ先もありますので、ぜひ子供と遊びにいってみてください。