春の訪れを知らせてくれるチューリップ。「親指姫」などの童話にも出てくるとあって、子どもにも親しみのある花のひとつです。そこで今回は、知っているようで知らなかったチューリップの世界を紹介します。
チューリップの定番&最新品種や希少品種、これから見頃を迎えるおすすめスポット、実はある色だけ存在しないことなど、日本一のチューリップ産地として知られる富山県の「富山県花総合センター」で主査を務める渡部哲次さんにお話を聞きました。
知っているようで知らなかった!? チューリップの基礎知識
まずはチューリップの産地や旬の時期、品種について教えていただきました。
チューリップの産地はどこ?
「チューリップというとオランダのイメージが強いと思いますが、実は原産地はトルコです。日本で本格的にチューリップの栽培が始まったのは大正時代で、新潟県、京都府、鳥取県などが主な産地として知られていますが、現在栽培面積で日本一を誇るチューリップ王国は富山県です」
チューリップの見頃はいつ?
「地域や品種によっても異なりますが、関東を基準としてチューリップの開花は早咲きのもので3月中旬〜4月上旬、中生咲きで4月上旬〜4月下旬、遅咲きで4月中旬〜5月上旬です。一番の見頃は4月〜5月上旬ですので、全国でも多くのチューリップ祭りもがこの頃に開催されています」
チューリップの品種はどのくらいある?
「チューリップの種類は実に多彩です。2017年現在、6,378品種が国際登録されていて、早咲き、遅咲きといった花の咲く時期と、卵形の一重、バラのように花びらが重なって咲く八重など花の形で15に分類されています」
「チューリップといえば花の色の鮮やかさが特徴ですが、青を除くすべての色があるといわれ、茶色や紫など変わった色の品種も存在します」
6,300以上も品種があるとは驚きですね。実際にどのような品種があるのか気になるところ。そこで定番の品種、希少品種など、品種の多いチューリップをいくつかのカテゴリーに分けて、渡部さんにテーマ別におすすめ品種を3つずつ選んでいただきました。
公園や花畑でよく見かける! 定番のチューリップ3選
まずは、定番の品種ですが、名前を初めて知ったという人も多いのではないでしょうか!?
(1)イルドフランス
チューリップと聞いて、多くの人が思い浮かべる「まさにこれぞ定番!」という品種です。印象的な鮮やかな赤い色が特徴です。
(2)ピンクダイアモンド
パステルピンクの愛らしい色が特徴の一重咲きの花です。花持ちが良いことでも知られています。
(3)モンテカルロ
八重咲きで、1本の花茎に数輪の花を着ける枝咲きタイプです。鮮やかな黄色が特徴です。
なかなか咲いていない! 希少品種のチューリップ3選
次は普段なかなか目にすることが少ない品種です。近所のチューリップ畑やお出かけ先で見つけたらラッキーかも!?
(1)スカーレットベビー
「ベビー」という名の通り、背丈が短く、葉に埋もれるようにあるつぼみから花が咲きます。赤い花弁の花底部が黄色くなっているところがポイントです。
(2)レッドライディングフット
グリム童話の「赤ずきんちゃん」を意味するチューリップです。芽吹きの時期に、葉に美しい斑点や縞が現れます。咲き始めは10cmほどの草丈で、ほかの花に先駆けて赤い花を咲かせます。
(3)ジャイアントパーロット
一重咲きの品種から突然変異によってできたもので、花弁の周囲に深い切れ込みとねじれが入るのが特徴です。花は直径30cmにもなり、朱赤の鮮やかな色が目を引きます。
名前が花とは思えない? 名前がかわいいチューリップ3選
名前を聞いただけではチューリップと想像できない品種もあるようです。
(1)春天使
富山県農業技術センターが開発した品種です。その名の通り、純白の羽根のような真っ白な花の色をしています。
(2)アイスクリーム
ピンク色の花弁の内側に、ソフトクリームのような八重咲きの白い花弁があるのが特徴です。花言葉は「愛の宣言」です。
(3)ミッキーマウス
子どもたちが大喜びしそうな名前のチューリップ! ミッキーマウスのシンボルである赤いパンツに黄色い靴と同様に、花弁の色が赤と黄色のツートンカラーです。
自宅で育てる! ベランダ栽培向きのチューリップ3選
草丈が低く、家庭用花壇や鉢植えに向いている品種もあるようです。「家庭でもチューリップを育ててみたい」という親子におすすめです。
(1)黄小町
大輪で見た目が華やかなのに茎がしっかりしていて、雨や風に強いのが特徴です。花壇と鉢植えともに向いています。
(2)ライトピンクプリンス
薄桃色がキュートな一重咲きの品種です。鉢植えに最適です。
(3)マッチ
花弁上部が明赤色から深紅へ変化し、その姿がマッチ棒に似ていることが名前の由来になっています。こちらも鉢植えに最適です。
ぜひ見たい! 最新品種のチューリップ3選
新しい品種も次々に登場しています。最新品種をチェック!
(1)春のあわゆき
2010年に品種登録申請がされたチューリップです。八重咲きの中では花びらの数が多く、白い花びらが盛り上がるように咲きます。
(2)はちみつミルク
富山県オリジナルの品種です。チューリップ農家で「フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2016」で特別賞を受賞した経歴もある伊藤仁嗣氏が育成しました。ミルク色の花弁に、はちみつのようなクリームイエローの模様があり、とても人気があります。
(3)情熱の花火
富山県で開発された品種です。八重咲きとフリンジ咲きの2種類の系統の特徴を併せ持った珍しい花の形をしています。
渡部さんおすすめ! 香りに特長があるチューリップ3選
色の鮮やかさや形が印象的なチューリップですが、渡部さんがあえて「香り」に注目して選んだおすすめ品種を紹介します。
(1)サンネ
果実を思わせる甘い香りがします。チューリップの場合、花色がピンクの品種はあまり香りが強くない品種が多いですが、例外的な品種です。
(2)バレリーナ
サンネ同様、フルーティーな香りが特徴です。鮮やかな赤みがかったオレンジ色で、バレリーナが手を広げたような優美な姿をしているユリ咲きのチューリップです。
(3)ローマンエンパイア
「トライアンフ系」と呼ばれる、一重の早咲き品種と一重の晩咲き品種を交配した、草丈が高く美しい姿をしたチューリップです。紅茶のような甘い香りがするのが特徴で、花弁の中心が赤く、その周囲をクリームホワイトが優しく包みこむ優美さで人気を集めています。
最後に、この春行きたい全国のチューリップ畑を6カ所紹介! チューリップの専門家でもある渡部さんに厳選してもらいました。
国営滝野すずらん丘陵公園(北海道札幌市)
北海道最大級の200品種23万球のチューリップが一面に咲き誇る「滝野すずらん丘陵公園」。虹をイメージした「虹の丘」や、複数の品種の混植によりパッチワークのような風景が広がる「彩の丘」など、見せ方にも工夫が凝らされています。
例年5月中旬〜6月上旬には「チューリップ・すずらんフェスタ」も開催されます。
<渡部さんのおすすめポイント!>
複数のチューリップ品種を混ぜて植える「ミックス植え」の醍醐味を楽しめる施設です。
■国営滝野すずらん丘陵公園
住所:北海道札幌市南区滝野247
開園時間:9:00〜17:00(最終入園は閉園1時間前まで)
※季節により閉園時間に変動あり、公式サイトでご確認ください
休園日:4月1日〜4月19日、11月11日〜12月22日
※4月19日、12月22日が日曜の場合、夏季は4月19日、冬季は12月22日より開園
入園料:大人(15歳以上)450円、15歳未満は無料、シルバー(65歳以上)210円
国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)
広大な敷地に、四季それぞれに咲き誇る花々を楽しめることで知られる「国営ひたち海浜公園」。敷地内にある「たまごの森」のチューリップ畑には約250品種25万本のチューリップが咲き、風車や卵型のオブジェが置かれてメルヘンな雰囲気を作り出しています。
毎年4月中旬〜下旬まで「チューリップワールド」が開催されます。
<渡部さんのおすすめポイント!>
チューリップと同時期に、スイセンやネモフィラなど季節の花も同時に楽しめる点が魅力の施設です。
■国営ひたち海浜公園
住所:茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4
開園時間:9:30〜17:00(最終入園は閉園の1時間前まで)
※季節により閉園時間に変動あり、公式サイトでご確認ください
休園日:月曜(祝日にあたる場合は翌日)
※春期3月26日〜5月31日・夏期7月21日〜8月31日・秋期10月1日〜10月31日・冬期12月25日〜30日、1月2日〜7日の期間中は休園日なし
※12月31日、1月1日、2月の第1火曜からその週の金曜までは休園
入園料:大人(高校生以上)450円、中学生以下無料、シルバー(65歳以上)210円
※上記は2018年4月からの料金
砺波チューリップ公園&チューリップ四季彩館(富山県砺波市)
日本を代表するチューリップの産地・富山県にあるチューリップをテーマとした都市公園です。公園内に「チューリップ四季彩館」があり、四季折々のチューリップを楽しむことができます。
毎年春には、およそ250万本の色鮮やかなチューリップが咲く「となみチューリップフェア」が開催されます。
<渡部さんのおすすめポイント!>
あふれるほどのチューリップに会える球根産地ならではの施設です。チューリップ四季彩館は、1年中いつでもチューリップを観賞できます。
■砺波チューリップ公園
住所:富山県砺波市花園町
開園時間:8:30〜17:30(最終来園は17:00まで)
休園日:チューリップフェア前後に準備および撤去作業のため臨時休園あり、公式サイトでご確認ください
入園料:チューリップフェア開催期間は大人(高校生以上)1000円、子ども(小・中学生)300円
※フェア開催期間外は入園無料
■チューリップ四季彩館
住所:富山県砺波市花園町
開館時間:9:00〜18:00
休園日:月によって変動あり、公式サイトでご確認ください
入園料:高校生以上310円、小・中学生150円、シルバー(65歳以上)250円
淡路島国営明石海峡公園(兵庫県淡路市)
甲子園球場の約10倍もある広大な敷地の中で、四季を通じて花を楽しめます。150もの遊具が集まった「夢っこランド」やバーベキューエリアもあり、小さな子ども連れでもたっぷり遊べます。
チューリップが開花する3月下旬〜4月中旬の週末には、満開のチューリップを背景にオランダ伝統の衣装を身につけて写真が撮れる「オランダ衣装体験」などのイベントも開催されます。
<渡部さんのおすすめポイント!>
1月中旬からチューリップが楽しめる「アイスチューリップ」など技術を駆使した施設です。体験教室に力を入れていて、子ども連れの家族も楽しめますよ。
■淡路島国営明石海峡公園
住所:兵庫県淡路市夢舞台8-10
開園時間:4月〜8月は9:00〜18:00、3月は9:30〜17:00
※季節により変動あり、公式サイトでご確認ください
休園日:12月31日、1月1日、2月の第1月曜とその翌日
入園料:大人(15歳以上)450円、シルバー(65歳以上)210円、中学生以下無料
※上記は2018年4月からの料金
兵庫県立フラワーセンター(兵庫県加西市)
自然の地形を活かして作られた全国でも有数の花の公園です。チューリップはとくに有名で、多品種のチューリップで埋め尽くされる風景は圧巻です。
毎年「チューリップまつり」が開催されていて、2018年は4月30日(月・祝)まで行われています。子どもや女性を対象としたオランダ衣装体験などもあり、インスタ映えする写真が撮れます。
<渡部さんのおすすめポイント!>
500品種もの多彩な色と形のチューリップに会えるスポットです!
■兵庫県立フラワーセンター
住所:兵庫県加西市豊倉町飯森1282-1
開園時間:9:00〜17:00
休園日:水曜(祝日の場合は翌日)、12月28日〜1月1日
※チューリップまつり、菊花展開催期間中は無休
入園料:大人(15歳以上)500円、高校生以下無料、障害者・シルバー(70歳以上)250円
熱帯ドリームセンター(沖縄県国頭郡)
温暖な気候の沖縄では、露地植えでも年明けから開花が始まるため見頃はすでに終えてしまいましたが、例年1月〜2月に日本で一番早くチューリップフェアを開催しています(次回の開催は現在未定です)。
チューリップは冬の低温に触れさせる事で春に開花するため、沖縄ではあまりポピュラーな植物ではありませんでしたが、技術や品種改良により、近年は沖縄でも多様な種類のチューリップが楽しめるようになっているそうです。
<渡部さんのおすすめポイント!>
日本で一番早く、約8万本ものチューリップに会える注目スポットです。
■熱帯ドリームセンター
住所:沖縄県国頭郡本部町字石川424番地(海洋博公園内)
開館時間:3月〜9月は8:30〜19:00、10月〜2月は8:30〜17:30(入館締切は閉館30分前)
休館日:12月の第1水曜とその翌日
入館料:2018年4月〜2019年3月までは大人(高校生以上)760円、未就学児・小・中学生無料
公式サイト:http://oki-park.jp/kaiyohaku/
いかがでしたか? チューリップはとても身近な花ですが、色や形も豊富でとても奥深い魅力がある花です。この春、チューリップを楽しみに。ぜひ、親子でおでかけしてみてください。
お話を聞いたのは…
渡部哲次さん
富山県花総合センター・主査。1967年福島県生まれ。1995年よりチューリップ四季彩館、2017年より富山県花総合センターで花壇の計画・管理に携わる。幼少より関わってきた球根植物を専門とする。