愛知県豊橋市の豊橋市自然史博物館(のんほいパーク内)で、2025年3月31日(月、臨時開館)まで「トピック展示 ラッコ」が開催されています。
かつての人気者・ラッコの標本を通じて、絶滅危惧種となったラッコの生態や博物館の役割について学べる貴重な展示です。
国内では見られなくなった希少なラッコ
現在、国内の動物園・水族館で飼育されているラッコは、鳥羽水族館(三重県)の高齢の雌2頭のみとなっています。
かつては約30カ所の施設で120頭以上が飼育されていましたが、乱獲や環境悪化により激減し、輸入規制や繁殖の難しさから国内でも姿を消していきました。
のんほいパークでも1994年から飼育を始めましたが、2014年に雌の「ヤヨイ」が亡くなって以降、ラッコの飼育は行われていません。
特徴的な骨格とふわふわの毛皮を観察
今回の展示では、19歳10カ月という高齢で亡くなった「ヤヨイ」の組立骨格が中心です。泳ぐ時に使う後ろ足の特徴的な指の長さや、貝やカニなどの固い殻を砕くための強力な顎の構造を間近で観察できます。
また、別個体のラッコのはく製も展示されており、愛らしい小さな耳や親指のないミトン形状の前足、発達した肉球なども見ることができます。ラッコの毛は哺乳類のなかでもっとも密度が高いことでも知られています。
ラッコの仲間や3D模型も展示
展示では、ラッコと同じイタチ科のニホンイタチのはく製や、カワウソ類の一種であるコツメカワウソの組立骨格も見ることができます。
また、ラッコの頭骨標本をスキャンして作製した3D模型を使った展示解説も随時開催される予定です。
標本が果たす重要な役割
のんほいパークの特徴は、動物園と博物館が同じ敷地内にあること。亡くなった動物は標本として保管され、教育や研究に活用されています。
主任学芸員の安井謙介さんは「これらの標本は非常に貴重な資料です」と、標本の学術的意義を強調しています。
現在は普通に見られる動物も、将来的には絶滅する可能性があります。標本があれば、その動物の実態を将来の世代に伝えることができるのです。
標本として第二の人生を送るラッコたち。ぜひ、この機会に親子でのんほいパークを訪れて、ラッコの愛らしい姿を思い浮かべながら、博物館が果たす役割について考える機会にしてみてください。
■トピック展示 「ラッコ」
開催期間:開催中〜2025年3月31日(月・臨時開館)まで
開催場所:豊橋市自然史博物館 イントロホール
観覧料:無料 ※ただし、豊橋総合動植物公園入園料が別途必要
展示物:ラッコ(はく製1点、組立骨格1点、頭骨1点)、コツメカワウソ(組立骨格1点)、ニホンイタチ(はく製1点)